西商店

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木造2階建 改修 店舗付住宅 2017年

戦後すぐに建てられた店舗付住宅を、イベントやワークショップなどを行うスペースのある住宅に改修しました。
お施主さんは人の集まるスペースということを重要視され、耐震改修を行うことを決定されました。
一般的な在来工法で行う耐震診断では、基礎もやり替え、屋根も瓦を軽いものに変更、あちこちを耐力壁や金具などで補強する必要があり、現実的ではありませんでした。
そこで、金物で固める在来工法以前の、やわらかい建築の性質にあった、木の復元力などを考慮する限界耐力計算に基づく耐震診断・補強を行いました。土壁が多く残っていたため、2階は、新たに耐力壁を作る必要がなく、既存の土壁を梁まで伸ばす工事のみで、屋根も瓦のままで耐力的には大丈夫でした。
1階は、耐力壁を一部増設する必要があり、以前女中さんのお部屋だったところを、新たに水廻りや事務室に改修するのに合わせた壁を利用、また2間分のアルミサッシであった店舗部分の出入り口を、半分を耐力壁に、半分を、既存の格子を生かした木製引き戸としました。
今回は土壁補修、新設が何カ所かあり、竹木舞をする職人さん、土壁をつくる左官職人さん達が、いまは滅多に無い仕事ということで、竹も、土も、奈良から運んでいただきました。昔はこんなふうだった、と興味深いお話しもいろいろお聞きすることができました。
既存の建具を利用できるものは利用し、新たに作る建具も、既存の物に合わせるなど、大工さんや建具屋さんにはかなり手間をかけていただくことになりましたが、おかげで、昔からあったような懐かしい空間になっています。
電気や通信、ガスなど設備関係は老朽化していて容量など足りなかったり、これまでの経緯で露出で配線配管となっていたものを、すべて更新し、なるべく見えない様、壁や天井内に隠していて、出来上がると隠れていて設備屋さんたちの苦労が全く見えなくなりましたが、逆にそれが、たくさん仕事をしてくださったということを示しています。光ケーブルもLANも昔懐かしい建物の内部で活躍しています。